ジョン・ル・カレの人気シリーズ小説『Tinker, Tailor, Soldier, Spy』が原作で2011年に公開された映画【裏切りのサーカス】は、その質の高いストーリー構成と原作者の実体験を基にしたリアリティのある展開で他とは一線を画す作品です。今回はゲイリー・オールドマン主演の映画【裏切りのサーカス】のキャストやあらすじ、動画配信情報など見どころをたっぷり紹介していきたいと思います。
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おすすめタグ 新作・準新作映画 / サスペンス・ミステリー / 社会派 / 小説が原作(洋画)
映画【裏切りのサーカス】の作品概要
- 原題|「Tinker Tailor Soldier Spy」
- 製作年|2011年
- 監督|トーマス・アルフレッドソン
- キャスト|ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディ、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロング、トビー・ジョーンズ、キーラン・ハインズ、ジョン・ハート他
- 原作|小説『Tinker, Tailor, Soldier, Spy』/ジョン・ル・カレ
映画【裏切りのサーカス】のあらすじ
東西冷戦時代、西陣営側のイギリスが抱える秘密情報部(通称“サーカス”)と、東陣営側のソ連有する情報部(通称“モスクワセンター”)は水面下で激しい諜報戦を繰り広げていた。そんな中、サーカスの諜報活動において秘密漏洩が疑われる失敗が続き、長官であるコントロール(ジョン・ハート)は、サーカス内部にソ連側の二重スパイ(=もぐら)がいると確信していた。もぐらの情報を探ろうと、サーカスの実働部隊であるジム・プリドー(マーク・ストロング)をハンガリーに送り込むも作戦は失敗。コントロールと、彼の右腕だったジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)は責任を取る形で引退を余儀なくされる。退職後コントロールは死去するが、ほどなくしてスマイリーのもとに今もサーカスに在籍する4人の幹部の中にいるもぐらを探し出すようオリバー・レイコン外務次官から連絡が…。スマイリーはピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)とともにもぐら探しを始める。果たして“もぐら”は誰なのか!?豪華俳優陣による心理戦から目が離せない!
映画【裏切りのサーカス】の登場人物・キャスト・吹替声優
- ジョージ・スマイリー・・・ゲイリー・オールドマン(辻親八)
- ビル・ヘイドン・・・コリン・ファース(森田順平)
- リッキー・ター・・・トム・ハーディ(鶴岡聡)
- ジム・プリドー・・・マーク・ストロング(加藤亮夫)
- ロイ・ブランド・・・キアラン・ハインズ(水野龍司)
- ピーター・ギラム・・・ベネディクト・カンバーバッチ(小川輝晃)
- トビー・エスタヘイス・・・デヴィッド・デンシック(鈴木正和)
- パーシー・アレリン・・・トビー・ジョーンズ(佐々木睦)
- コントロール・・・ジョン・ハート(大塚周夫)
- イリーナ・・・スヴェトラーナ・コドチェンコワ(石田嘉代)
- コニー・サックス・・・キャシー・バーク(増子倭文江)
- カーラ・・・マイケル・サーン
映画【裏切りのサーカス】の動画配信情報
※一部レンタル・購入の場合あり。
※2022年12月時点の情報です。最新の配信情報は各VODサービスにてご確認下さい。
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映画【裏切りのサーカス】の舞台と原作
イギリスのスパイ機関MI6とは?
この作品の舞台は東西冷戦時代のイギリスが有した秘密情報部(Secret Intelligence Service、SIS)。MI6の略称で広く呼ばれ始めたのは第二次世界大戦中です。番号が割り振られていることから分かるように、扱う情報のカテゴリーごとにMI1、MI2、とセクションを割り振られていました。MI5は有名でご存知の方も多いですよね!MI5は主にイギリス国内の機密情報を扱うセクションで、これに対しMI6は国外の機密情報を扱うセクションとされています。今や海外ドラマや映画などでMI5、MI6のスパイをテーマにした作品は多くありましたが、実はイギリス政府は1994年までMI6等の諜報機関の存在を公式には認めていませんでした。
冷戦時のMI6/サーカスの役割は?
“サーカス”という呼び名は、この秘密情報部がロンドンのケンブリッジサーカスという場所にあったことからです。冷戦中は、アメリカのCIA(中央情報局)と連携して東陣営側のKGB(ソ連の秘密警察)を相手に諜報戦を繰り広げていました。“冷戦”は国同士が直接軍事力をもって戦争するのとは違い、外交や経済、産業開発などあらゆる分野で世界が対立した構造のことで、それには各国の収集する「情報」が何に置いても価値のあるものでした。どの国がどの国に何をしようと企んでいるのか、どの国がどんな情報をにぎっているのか、水面下で色んな国の諜報戦が繰り広げられていた時代だったのです。
原作はジョン・ル・カレの『Tinker, Tailor, Soldier, Spy』
この作品の原作は、スパイ小説作家として世界的に有名なジョン・ル・カレの小説『Tinker, Tailor, Soldier, Spy』です。主人公のジョージ・スマイリーが彼の他の小説にも多く登場し、1970年代に発表された長編3作品(「Tinker, Tailor, Soldier, Spy」、「スクールボーイ閣下」、「スマイリーと仲間たち」)は特にスマイリー三部作と呼ばれ日本でも人気があります。この映画「裏切りのサーカス」は登場人物を覚えるのもひと苦労。余計な説明シーンなども劇中には無いので、原作の知識が無いまま映画を観ても全て理解するのは難しいです。まだ映画を観ていない方は、小説を読んでから観るのもおすすめですよ!
ジョン・ル・カレはかつてMI6のスパイだった!
原作者のジョン・ル・カレは実はMI6のスパイでした。教師を2年間やった後、外務・イギリス連邦省に入り、1956年にMI5の下級職員になります。1960年にはMI6への転属願いを出し訓練を受け、MI6としての活動が始まります。活動中は主に外務省書記官、ハンブルグ領事として西ドイツに駐在し、その傍ら小説の執筆に取り組み、1961年には処女作「Call for the Dead(死者にかかってきた電話)」を発表します。彼のスパイとしての経験がその後の小説家活動において非常に重要なテーマとなり、経験に基づいたリアルな描写が今なお多くのファンを魅了しています。
『Tinker, Tailor, Soldier,…』はイギリスの古い数え歌
この映画の原題、そして原作のタイトルでもある『Tinker, Tailor, Soldier,…』はマザーグース(イギリスやアメリカの古くから伝わる童謡)の数え歌で、コントロール(ジョン・ハート)がサーカス内部の二重スパイがいると探っていた時、幹部らをその数え歌になぞらえてパーシー・アレリン(トビー・ジョーンズ)をTinker、ビル・ヘイドン(コリン・ファース)をTailor、ロイ・ブラント(キーラン・ハインズ)をSoldierと名付けていました。スマイリーはコントロールの死後に彼の部屋を訪れた際、チェスの駒にそれらのコード名と幹部らの顔写真が張り付けられているのを見つけ、そしてなんとスマイリー自身も疑われていたことを知ることになるのです。
映画【裏切りのサーカス】の見どころ
ゲイリー・オールドマンの緊迫感ある演技にくぎ付け
この作品、とにかく出演俳優の豪華さが目を引きますよね!主人公スマイリーを演じるのは確かな演技力、ストイックな役作りで定評のあるゲイリー・オールドマン。映画の開始20分までスマイリーは一言も話さず、目や表情だけでどんなキャラクターの人物なのか観客に印象づけます。派手に感情をさらけ出すことはないものの、サーカス内部の“もぐら”が誰なのかじわじわと追いつめる緊迫感や、妻であるアンの不倫に葛藤を抱え、宿敵カーラとの暗黙の対峙に向き合う静かな演技がこの作品の最大の見どころといってもいいでしょう。
コリン・ファース、マーク・ストロングの映画『キングスマン』コンビ!
【英国王のスピーチ】でアカデミー賞主演男優賞を受賞したコリン・ファースと、彼が主演したスパイアクション映画のヒット作【キングスマン】シリーズで共演していたマーク・ストロングが、この【裏切りのサーカス】でもタッグを組みました。しかも二人が演じたビル・ヘイドン(コリン・ファース)とジム・プリドー(マーク・ストロング)は本作において重要な鍵を握るキャラクター。ファンにとってはたまらない競演なのです。
ベネディクト・カンバーバッチにトム・ハーディまで!
世界中の若い女性たちから人気を誇るイケメン俳優たちも競演しています。日本でも大人気のベネディクト・カンバーバッチは、スマイリーと共に“もぐら”探しをするピーター・ギラム役。渋くて迫力のある俳優たちの中、軽妙ながらも確実な存在感を放っていました。そして演じる役によって全く印象を変える徹底した役作りで話題のトム・ハーディは、ギラムの部下でサーカスの実行部隊リッキー・タ役を演じました。日本だとディカプリオと共演した【インセプション】で彼を覚えている人が多いのではないでしょうか?個人的な感想ですが、この二人は本作において観客に「今こういうことが起こっていますよ」とヒントを与える役割を果たしているように感じました。他のキャラクターは緊迫感のある静かな演技がメインなので、初めてこの作品を観た時はなんだかすべてが思わせぶりに思えてしまうというか…(笑)この二人は割とキャラクターの感情を表に出して描かれていたので作品全体の緩急がついて、とても鑑賞しやすくしているように思いました。
リアリティ溢れる演技がすごい!
この作品の魅力の一つに、じりじりとしたリアリティのある心理戦の描写があります。原作者のジョン・ル・カレの実体験に盛り込まれて基づいた作品と、その世界観をとても丁寧に映画に仕上げた監督陣のおかげで渋くて迫力のある演技が実現されています。スマイリーを始め、相手の言動を静かに探り合うシーンや、色々なことが紐解かれていく中での各キャラクターの心情の表現がとても緻密で印象的です。スパイ映画と聞くと派手でスタイリッシュなものを想像しがちですが、本作品は静かに、でも確実に観客の心情に迫る雰囲気をまとっていて、観た後もずっと後を引く素晴らしい作品です。
何度も観ると気付く数多くの伏線に脱帽!
この作品、普段スパイ映画を観慣れていない人は、一度観ただけでは内容が分かりづらいかもしれません。この作品の魅力は2回目、3回目と観ても面白い発見があるところ。誰が“もぐら”が誰なのか解かっていても、「なぜそうなったのか」、「いつからスマイリーは気付いたのか」という結末までの経緯を楽しむこともできます。そして所々に散りばめられている伏線となるアイテムに気付くと、結果的に何を意味していたのかが理解することもできてクセになるのです(笑)。スパイ映画は時々、観客への説明部分となるシーンがあまりにも親切過ぎて興ざめすることがありますが、【裏切りのサーカス】はそういった余計な説明は一切省いているので、映画通にも満足度の高い上質な作品に仕上がっています。
映画【裏切りのサーカス】の肝!スマイリーとカーラの関係
この作品の大きな軸となるビル・ヘイドン(コリン・ファース)とジム・プリドー(マーク・ストロング)の関係。注意深く観ればただの親友ではなく互いに愛し合っていたことが理解できます。そしてピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)も、スマイリーから身辺整理を促され恋人であるリチャード先生(男性)と別れるシーンがあり、この映画には所々に同性愛の描写があります。そこで映画を観終わったあとに思い返してみると、目に見えるこの複雑な愛の描写の陰に、スマイリーとカーラの奇妙な関係が見え隠れすることに気付くのです。カーラはソ連有するKGBの大物スパイ。工作員としてソビエト国外で活動していた時、アメリカで逮捕されてしまいます。そしてモスクワへ送還される道中、スマイリーと初めて会うのですが、スマイリーはそのままモスクワへ送還されれば殺されることになるカーラを西側へ寝返らせようと説得を図ります。その時、スマイリーとカーラはお互いの人間としての魅力に引き込まれ、また同時にお互いの弱点も見抜くのです。自分のスパイとしての宿命を受け入れ、結局カーラはモスクワへ帰国。その時にスマイリーが妻アンから贈られたライターを携えます。このライターもこの作品のカギとなるアイテムです。モスクワへ戻り、もう殺されてしまっただろうと思っていたカーラの存在を、もぐら探しをしながら確信していくスマイリー。カーラのスマイリーへの特殊な執念の感情が、姿は見えないながらもありありと感じることができます。
映画【裏切りのサーカス】伏線と‟気付き”が畳みかける至高のスパイ・エンターテインメント!
スパイ映画といえば派手な展開とドラマティックな結末を想像しがちですが、これほど静かでリアルな作品は他にないと思います。スマイリーの秘めた心情をゲイリー・オールドマンは見事に演じ、表情やふるまい一つから十分に彼の人間性が表現されていました。いつも冷静で、確かな頭脳を持ち洞察力もずば抜けていたスマイリー。しかし彼の最大の弱点は愛する妻であるアンでした。カーラが送り込んできたもぐらのビル・ヘイドンはアンをたらしこみ、スマイリーの心をじわじわと侵食していきますが、そうすることでスマイリーはカーラの存在にものみこまれていくのです。この作品はスマイリーを中心とした大きな軸で観ても面白いし、ビル・ヘイドンとジム・プリドーの2人を軸にして観てもこの映画の「旨味」を味わうことができます。そして何より、豪華な俳優陣たちの見応えある静かな演技バトルに脱帽でした。