2017年に公開された映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】。アメリカを揺るがせた「ペンタゴン文書漏洩事件」を報道したワシントンポストの発行人、キャサリン・グラハムが主人公の社会派作品です。今回は映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】のキャストやあらすじ、動画配信情報、そして作品の感想・考察など見どころをたっぷり紹介していきます!


■映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】の作品概要
- 原題・・・「The Post」
- 製作年・・・2017年
- 製作国・・・アメリカ
- キャスト・・・メリル・ストリープ、トム・ハンクス他
- 監督・・・スティーヴン・スピルバーグ
■映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】の作品のあらすじ
泥沼化するベトナム戦争の中、当時海兵隊員として派遣されていたダニエル・エルズバーグ(マシュー・リス)。アメリカ国内で報道されていた楽観的な戦況と実際の戦場で目の当たりにした戦況との違いに、彼は疑問を抱きます。同じくこの状況に疑問と危機感を抱いていた当時のアメリカ国防長官、ロバート・マクナマラ(ブルース・グリーンウッド)は、アメリカ政府が今後同じことを繰り返さないように、あくまでも客観的にこのベトナム戦争を分析・記録することを命じます。その後エルズバーグはランド研究所に在職中、そのベトナム戦争に関する重要な文書(ペンタゴン・ペーパーズ)を反戦運動に役立てようとリークするのです。アメリカ政府そのものの信頼を揺るがすショッキングな事件は、最初にニューヨークタイムズによって明らかになります。そして、タイムズのライバル紙であるワシントン・ポストも、タイムズが公表した文書の残りを入手し、真実を報道しようと奔走します。
当時ワシントン・ポストの発行人であったキャサリン・グラハムを演じたのはハリウッドの大女優、メリル・ストリープ。夫の突然の自殺により、彼に代わってワシントン・ポストの社主・発行人を務めることになりますが、もともと主婦だった彼女は初めて足を踏み入れた世界で背負ったものの大きさに戸惑いつつも、やがて会社にとっても大きな決断を迫られます。ワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリーをトム・ハンクスが熱演。「報道の自由」とは何か、真実を追求し報道する勇気、信念を貫き団結して文書の公開に踏み切ったキャサリン・グラハムと記者たちの姿を描いた作品です。
■映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】の主な登場人物・キャスト
- キャサリン(ケイ)・グラハム・・・メリル・ストリープ
- ベン・ブラッドリー・・・トム・ハンクス
- トニー・ブラッドリー・・・サラ・ポールソン
- ベン・バグディキアン・・・ボブ・オデンカーク
- フリッツ・ビーブ・・・トレイシー・レッツ
■映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】の動画配信情報
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■映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】作品の背景
アメリカを揺るがせた「ペンタゴン・ペーパーズ(=最高機密文書)漏洩事件
ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内で政府への疑問や不信感が高まっていた最中、ベトナム戦争の客観的な分析記録いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」(=最高機密文書)の存在がニューヨークタイムズによって明らかになります。芳しくない戦況と分析しつつも若い兵士たちの命を犠牲にさらしたアメリカ政府の実態を明らかにしようと、タイムズのライバル紙「ワシントン・ポスト」もその文書の残りの入手、報道に向けて奔走し、この事件はその後のワシントン・ポストの立場、アメリカの歴史にも大きく影響していきます。
ベトナム戦争とは
もともとはベトナムの統一権を主張しての南北に分かれての内戦でしたが、私たちが一般的に知っている「ベトナム戦争」とは、アメリカが軍事介入し北ベトナム軍対アメリカ軍・南ベトナム政府軍の長期化された戦争のことです。内戦から他国も巻き込む大きな戦争へと発展した「宣戦布告なき戦争」とされ、正確な戦争開始時期ははっきりと定義されず「1960年頃」とされています。北ベトナムの共産党政権が南ベトナムや東南アジア全体に拡大されることを強く警戒したアメリカは北ベトナムへ攻撃、当時のケネディ、ジョンソン、ニクソン各大統領政権においてこの戦争は泥沼化していき、長い時間をかけて多くの命が犠牲になっていくのです。
アメリカ政府が隠そうとしたもの
長期化し泥沼化したベトナム戦争の中、1971年に「ペンタゴン・ペーパーズ(=最高機密文書)」の存在が明らかになります。最初に報じたのはニューヨークタイムズ紙。そもそも、その文書が作成されたのは、アメリカの国防長官マクナマラをはじめとする戦争立案者たちが、拡大化するベトナム戦争を疑問視し始め戦争自体をあくまで客観的に記録するため。その文書に書かれていたのは、これ以上アメリカが軍事的介入を続けても事態は悪化し多くの犠牲をはらうことになり、アメリカの介入自体が間違っていたのでは、ということを結果的に明確にしたものでした。このベトナム戦争の長期化によってアメリカ国民には政府に対する不信感が高まっていました。ベトナム戦争にアメリカが軍事介入して以後、大統領が代替わりしながらもこの実態を知りながら隠してきたということがこの文書が公になることで暴露されれば、アメリカ政府そのものへの信頼が崩壊してしまう、と政府は恐れたのです。
■映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】の見どころ
キャサリン・グラハムという女性
恥ずかしながら、私はキャサリン・グラハムという女性についてほとんど無知でした。彼女の自伝ともいうべき「キャサリン・グラハム~わが人生~」も、映画を観た後に読みました。当初は、よくあるキャリアウーマンのサクセスストーリー的な映画なのかと(実に安直な発想ですが)思っていましたが、観てみるとその内容はとても深く考えさせられるものがあり、アメリカが背負っている歴史や、彼女が乗り越えてきた問題に大変興味を持ちました。
私が感じた彼女の魅力は、その謙虚さです。自分が思ってもみなかったタイミングでワシントン・ポストの経営を担うことになり、目の前に立ちはだかる大きな壁に戸惑い葛藤しながらも、謙虚に学び立ち向かっていく姿に心を打たれました。家族が守ってきたワシントン・ポストを自分も守り抜くという強い信念と、どんなに困難に陥っても、立場や自分自身、仕事そのものや会社の未来を卑下することがなかった彼女の姿は、観る人の心を勇気づけます。
彼女はワシントン・ポストを家族からもらった大切なプレゼントのように愛していました。自分が愛しているものをくれた家族、信頼してついてきてくれる会社の人たち、そしてなにより、ワシントン・ポストを同じように愛してくれている読者を失望させたくないという想いが彼女の根底にあるように感じました。それは特に経営者などの大きく大変な立場にいる人間だけでなく、信念を持って仕事をする全ての人間が親近感と愛情と尊敬の念を持つことができます。まだご覧になったことがない方は、ぜひどこかの機会に観て頂きたい素敵な作品です。
この映画で描かれている主役、キャサリン・グラハムという女性について、皆さんはどれくらい知っていますか?彼女はこの機密文書の暴露事件が起きた当時、ワシントン・ポスト紙の社主・発行人を務めていた人物で、アメリカ国内では有名人です。彼女は突然自殺した夫に代わり、ワシントン・ポストの社主・発行人を務めました。もともと主婦だった彼女は、経営のことや業界のことなど、夫のそばで見守っていた時との違いやまるで知らない世界に飛び込んだ戸惑いで押し潰されそうになりながらも、「自分なりのやり方」でその困難を乗り越えていきます。この「ペンタゴン文書暴露事件」においても、友人であるマクナマラ、ポストの編集主幹のベン・ブラッドリー、同じくポストの経営陣たちとの間で悩み葛藤し、文書を公開すべきかどうか大きな決断を迫られます。この映画でも彼女の人物像が細かく描写されていますが、苦悩し葛藤する自分を素直に受け入れながら、自分に正直であり続け、謙虚に周りの意見に耳を傾け、彼女らしく物事を判断していく姿には大きな勇気をもらうことができます。決して自分の社主としての立場におごらず、未知な分野も地道に学び、困難な状況に陥っても自分を卑下せずに立ち向かっていく姿勢には、同じ働く女性として学ぶことが多くありました。
ワシントン・ポストが迫られた決断
ワシントン・ポストは、1877年に日刊紙として創刊された歴史あるアメリカの新聞社です。首都ワシントンD.C.の地方紙でありながら、ウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨークタイムズなど大手の全国紙に次ぐ発行部数を誇り、主に政治を中心として構成でアメリカでも特に高学歴層に好まれています。キャサリン・グラハムが社主を務めたのは夫のフィリップ・グラハムの謎の自殺の後で、この映画の題材となった「ペンタゴン文書暴露事件」やその後の「ウォーターゲート事件」(当時のニクソン大統領を辞任に追い込んだ)を報道したのも彼女が社主・発行人だった時です。もちろん当時のアメリカ政府からは相当な報道抑制がありましたが、それに屈することなく真実を報道したことで、アメリカの「報道の自由」の確立に貢献しました。
結果的にこの決断は称賛され今も語り継がれていますが、当時あくまでも地方紙だったワシントン・ポストがその決断をすることはとても重要な意味を持ち、決断するには大変な苦悩がありました。最初にこの文書の存在を報道したのはニューヨークタイムズ。タイムズはワシントン・ポストにとってライバル紙であり、当時のポストの編集主幹だったベン・ブラッドリーはワシントン・ポストをタイムズ紙に並ぶ大手の新聞社にのし上げようと情熱を燃やしていました。報道するべき「真実」がそこにあると確信した彼は、このチャンスを逃してはならないとキャサリン・グラハムを説得します。タイムズ紙が報道翌日に政府から裁判所を通して差し止め要請を受けており、そのタイムズ紙と文書の入手先が同じであること、報道すればタイムズ紙同様政府からの圧力は免れず、株主たちからの批判も想像すればその決断がいかに難しいものであったかが分かります。
彼女は経営陣やベン・ブラッドリー、愛する家族の意見も聞きながら、本当に大切なことは何なのか、アメリカにとって報道機関の立場から出来得る最も良い判断は何なのか熟慮し、決断します。映画でもこのシーンはとても印象的に描かれ、いつも彼女が頼っていたフリッツ・ビーヴ(トレイシー・レッツ)が「自分だったら公開しない」と発言したことに衝撃を受けながらもそれに後押しされるように彼女らしい決断をします。私はこのシーンを観た時に、フリッツがあえて理由や詳細などを語らず「あくまで自分だったら公開しない」とだけ発言したことが、彼女の背中を押したように見えました。彼女が経営者として、報道する側の立場として、大きく言えばアメリカ国民として、あらゆる角度から彼女なりの「正しい」決断をしたように感じました。そしてこの決断が、ワシントン・ポストの未来を大きく変えていく転換期のきっかけになるのです。
■映画【ペンタゴン・ペーパーズ~最高機密文書~】キャサリン・グラハムから学ぶこと
恥ずかしながら、私はキャサリン・グラハムという女性についてほとんど無知でした。彼女の自伝ともいうべき「キャサリン・グラハム~わが人生~」も、映画を観た後に読みました。当初は、よくあるキャリアウーマンのサクセスストーリー的な映画なのかと(実に安直な発想ですが)思っていましたが、観てみるとその内容はとても深く考えさせられるものがあり、アメリカが背負っている歴史や、彼女が乗り越えてきた問題に大変興味を持ちました。
私が感じた彼女の魅力は、その謙虚さです。自分が思ってもみなかったタイミングでワシントン・ポストの経営を担うことになり、目の前に立ちはだかる大きな壁に戸惑い葛藤しながらも、謙虚に学び立ち向かっていく姿に心を打たれました。家族が守ってきたワシントン・ポストを自分も守り抜くという強い信念と、どんなに困難に陥っても、立場や自分自身、仕事そのものや会社の未来を卑下することがなかった彼女の姿は、観る人の心を勇気づけます。
彼女はワシントン・ポストを家族からもらった大切なプレゼントのように愛していました。自分が愛しているものをくれた家族、信頼してついてきてくれる会社の人たち、そしてなにより、ワシントン・ポストを同じように愛してくれている読者を失望させたくないという想いが彼女の根底にあるように感じました。それは特に経営者などの大きく大変な立場にいる人間だけでなく、信念を持って仕事をする全ての人間が親近感と愛情と尊敬の念を持つことができます。まだご覧になったことがない方は、ぜひどこかの機会に観て頂きたい素敵な作品です。
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