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【エッセイ】イーストウッドが鳴り響く

イーストウッドが鳴り響くエッセイ

【グラン・トリノ -Gran Torino-】を観た時の感情が忘れられない。クリント・イーストウッドの監督作品であり、主演も彼が務めている。エンターテインメント性よりも、彼の使命感が痛いほど伝わってきた。今この瞬間、この男を演じなきゃいけない、人間の品位とは何かを訴えなきゃいけない、という痛烈なエネルギーがどの場面にも溢れていた。

そして、個人的にこの映画がずっと胸に残る理由の一つが、エンディングでの流れるジェイミー・カラムの曲だ。彼の声は聴く者の耳にこびりついて離れないほど‟バリバリ”と鳴り響く。体中から音楽が湧き溢れているような歌手だ。この時まだジェイミーは20代。一つ一つのフレーズと響きが映画とリンクして、お互いを際立たせている、あの映画はジェイミーの声が加わって完成されていた。

気むずかしい軍人・ウォルト(イーストウッド)がタオという少年と不思議な絆を育てていく。【グラン・トリノ -Gran Torino-】は戦争が終わっても蔓延する社会問題への警鐘でもあり、「償い」の意味とは何かという哲学的なテーマも受け取ることができる。観終わった後に爽快感は何もないけれど、生きていく上での何かとても大切なパーツを受け取った気持ちになった。ジェイミーはどんな気持ちでこの曲を歌ったのだろう。

作品と主題歌が完璧にマッチしていると感じる映画は実は少ない。作品と楽曲の相性は、作り手側と鑑賞する側において少なからず温度差がある。しかし【グラン・トリノ -Gran Torino-】は本当に見事だった。イーストウッドが秘めた使命感と、切実に響くジェイミーの声がスクリーンで一緒になった瞬間、作品として観客に伝えたいメッセージはより正確になって届いたのだ。

私が映画を愛してやまないのは、こういう作品との出会いがあるからだ。今までに観た作品をそれぞれ思い出す時に、映像やストーリーだけではなく衣装や音楽まで一緒になって頭の中に映し出されると、「あぁ、やっぱり観て良かった。」と幸せな気持ちになる。あらゆる角度から愛情を注いで完成させた作り手側と、作品を‟共有”できた気持ちになるのだ。

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