Essay

【エッセイ】猫の背中

※本ページはプロモーションが含まれています

エッセイ アイキャッチ画像

私はもうすぐ5歳になる黒猫を飼っている。もともと出張の多い営業職だった私は、動物好きだったがペットを飼うのは諦めていた。でもひょんなことから仕事も落ち着き、タイミングを見計らったかのように頂いた縁で、保護猫だった彼女(メス)を引き受けたのだった。おてんばで気の強いお姫様だが、愛猫との暮らしはとても幸せなものである。家にいる時にいつも私の後をついてくるのがたまらなく愛おしい。

私が特に幸せを感じるのが、サンルームで気持ちよさそうに日向ぼっこをする彼女の背中を撫でること。陽ざしをめいっぱい浴びて、じんわり温まったその背中は、私にとっての「幸せの感触」そのものだ。その背中に触れていると、「ごちゃごちゃ悩まなくたって、家でのんびりゴロゴロしていれば幸せじゃない。」と言われているような気がしてきて心地いい。

彼女は私に色んな表情を見せてくれる。赤ちゃんのように甘えてきたり、こちらに見向きもせず窓の外の鳥たちに夢中になっていたり、かと思えば達観したような眼差しでこちらを見つめていたり・・・。言葉は交わせなくても、やはり彼女は私にとって娘や妹、親友のようであり生きている上で大切なパートナーなのだ。

黒猫

ペットを飼っていると、どうしたって考えなければならないのが「命の期限」。普通に考えればペットたちの最期を飼い主が看取るという当たり前の覚悟が必要で、私もふとした時にそのことが頭に浮かぶ。今は特に何も持病もなく、よく食べてよく寝てとても健康的に毎日を過ごしているけれど、いつか向き合うべき‟その時”を考えると、思わず涙が滲んでしまう。「いつか彼女の背中を撫でられなくなる日がくるのだ。」と考える日は、どうしても背中を撫でる手を止められない。

彼女がどんな最期を迎えても、その瞬間に私は彼女の背中を撫でていたい。「たくさんここを撫でてもらったな。」と感じてくれるかは分からないが、たくさん幸せをもらったその背中にたくさん「ありがとう」を伝えようと決めている。

少ししんみりしてしまったが、現状は全くもって元気いっぱいな彼女とまだまだ長い時間を共に過ごすわけなので、おてんばな彼女に喜んで振り回されよう。ソファやカーテンがぼろぼろになったって、畳んだばかりの洗濯物に突進されたって、私はとーっても幸せなのである。

-Essay

error: Content is protected !!